2019年5月ごろに発覚した通称「なんちゃってスキーム」と呼ばれるフラット35の投資目的の物件への不正融資問題についての解説記事です。
本来自分や親族が住む住宅にしか使えないフラット35という名前の住宅ローンを、投資を目的とした賃貸住宅の購入のためのローンとして利用していたことが発覚した問題です。
フラット35は住宅の購入促進のために国が税金で一部の金利を負担しているので、普通の銀行では借りられないような定収入の人でも、住宅ローンを低い金利で借りることができる点を悪徳業者に狙われる形となりました。
またフラット35の融資窓口として最大手だったARUHIからも多くの不正融資が出されているのではないかと疑われています。
それぞれ具体的に見ていきましょう。
事件の概要
2019年5月初旬 不正に関する最初の報道
フラット35を悪用し不動産投資 「住む」偽り賃貸用に
2019/05/04
1%程度の固定低金利で長年借りられる住宅ローン「フラット35」を、不動産投資に使う不正が起きていることがわかった。ローンを提供する住宅金融支援機構も「契約違反の可能性がある」とみて調査を始め、不正を確認すれば全額返済を求める方針だ。
不正が見つかったのは、東京都内の中古マンション販売会社が売った物件向けのローン。元男性社員(50)が朝日新聞の取材に応じ、「フラット35を投資目的で使ったのは、昨年6月までの約2年間に売った150戸前後。仲間の仲介業者らと一緒にやった。このしくみでトップセールスマンになれた」と証言した。販売会社は昨夏にこの社員を懲戒解雇し、昨秋までに機構へ届け出た。利用客の一部も機構から事情を聴かれている。
~中略~
元社員によると、利用客は年収300万円台以下の所得層が大半で、200万円前後の借金を抱える人も多かった。「借金を帳消しにして不動産も持てる」などと勧誘していた。利用客はマンションの賃貸収入でローンを返す。本来は投資用なのに「住む」と偽って融資を引き出す手口で、不動産業界では「なんちゃって」と呼ばれる。
朝日新聞デジタルより
- 住宅ローン商品の「フラット35」で投資用不動産を購入するのは契約違反
- 発見したら全額一括返済を求める方針
- 不正を暴露した社員は1人で150件程度販売
- 利用客は年収300万円以下が多く、200万円ほどの借金もちも多かった
- 通称「なんちゃって」

5月下旬 不正疑いの案件が洗い出される
「フラット35」不正疑い113件、住宅機構が公表
2019/5/20
住宅金融支援機構は20日までに、長期固定金利型の住宅ローン「フラット35」を巡る不正利用の調査を9月までに完了させる方針を明らかにした。また、不正の疑いがある融資が113件あることも公表した。機構は不正の事実が確認できれば、融資の一括返済を求めるなどの対応を取る。
日本経済新聞より

12月下旬 新たな不正利用発覚で合計162件に
住宅ローン「フラット35」 不正利用162件確認
2019/12/25
「フラット35」は住宅金融支援機構が民間の金融機関と連携して取り扱う住宅ローンで最長で35年間金利が固定されます。利用は、自分で住む目的で住宅を購入する場合に限られますが、投資用の住宅の購入に不正に利用されたケースが見つかったため、ことし4月から機構が調査を進めてきました。
その結果、不正な利用は新たに57件確認され、すでに公表したものと合わせて162件に上り、平成28年度と29年度に集中していることが分かりました。
NHKニュースより
ペナルティは?買ってしまった人はどうすればいい?
バレた場合のペナルティ
ここまでのニュース記事でも書かれていますが、投資用物件をフラット35を利用して不正に融資を引き出して購入していた場合、バレてしまうと全額一括返済を求められます。
その場合には以下のどれかの方法を取ることになるでしょう。
- 違うローンに借り換える
- 物件を売却したお金で借金を返す
- 物件を売却したお金と、手持ちの現金で借金を返す
- どれもできずに破産
1に関しては実際にはバレてしまった場合、他に貸してくれる銀行は見つかる可能性は少ないですし、そもそもなんちゃってで買うような人は普通のローンが借りれない人ばかりのはずです。
なので物件の売却金額と、手持ちの資金との兼ね合いで2~4のどれかになります。
高く売れれば2でラッキー、安く売れても手持ちがあればなんとか3、手持ちもなければ残念ながら破産です。
基本的にはバレてから行動していたら遅いので、バレる前に対処しておきましょう。
買ってしまった場合の対処法
バレる前に借りているフラット35を返してしまえば問題は解決します。
なのでまずは物件を残債よりも高値で売却できるかどうかを調べてみましょう。
バレる前に余裕を持って売却を進めておけば、もしかしたら高値で売れて一切手出し無しで済むかもしれません。
売却してもローンが残りそうなら、投資用ローンに借り換えができないかどうかも考えましょう。ただし住宅ローンから金利の高い投資用ローンに借り換えする人はあまりいないので怪しまれます。
「転勤で住めなくなるので、賃貸に出そうと思ってる。そのために住宅ローンじゃなくて投資用ローンにする必要がある」という風に理由付けをきちんとしておきましょう。
ローンの借り換えもダメだったらバレないことを祈りましょう。
そこに住んでるかどうかの確認は転送不可の郵便で行うのが王道です。自分宛ての郵便物を入居者さんに受け取ってもらうなどの相談をしておけば、バレにくくなります。
ARUHIが不正融資を出していた?
フラット35は、住宅金融支援機構と民間の金融機関が提携した商品ですので、あらゆる銀行や信用金庫で取り扱いがあります。
その中でもローン専門の金融機関大手ARUHIは不正利用の温床ではないかとのうわさがあります。
ビジネスジャーナル:住宅ローン大手アルヒで「フラット35」不正利用の疑い…多重債務者の借り換えの温床か
これに対してARUHIはプレスリリースで以下のように発表しています。
【フラット35】に関する一部報道について
2019年5月4日の朝日新聞で、【フラット35】※が不動産投資に悪用されているという報道がなされました。
当社が主体となり不正を行った事実は確認されておりません。しかしながら、過去の融資案件につき不正な申請が持ち込まれ、当社が意図せず実行した可能性について、かねてより住宅金融支援機構様と協力し、調査を実施しております。同時に不正な申請を阻止する審査プロセスの厳格化につき住宅金融支援機構様と共に既に取り組んでおり、今後も継続して全力で強化してまいります。
以上
2019/05/07 ARUHIプレスリリースより
要約すると、知らないうちに不正融資しちゃってるかもね、とプレスリリースで発表してますね。
そしてこの記事を書いているのが12月ですが、調査結果についてはプレスリリースが出されていません。
これだけの期間何もないと、とんでもない量の不正利用が発覚して、とてもじゃないが表に出せない状態になっているのではないかと勘繰ってしまいます。(理由の考察は後述)
公式の発表も、メディアでの報道もないので詳しくはわかっていません。
発覚件数が少ない理由考察
恐らく管理人の推定では1万件以上のなんちゃって融資が行われているはずですが、162件しか発覚していません。
この理由として考えられるのが、ローン貸してる側は破産されると損、そして不正融資を受けている人達の属性が低いことです。
現在調査が進み、実はかなりの量の不正融資が発覚していると仮定します。
この現実を発表した場合、すべてに対して平等に一括返済を求めなければならなくなります。
しかしなんちゃっての場合、通常の相場よりも高い値段で取得していることが多く、ほとんどの購入者が物件を売却してもローンを返すことができません。
そして購入者の多くが年収300万円以下、もともと借金持ちも多かったという事実もあるので、ローンの残債と物件の売却額の差額を補填できる現金があるとは思えません。
つまり一括返済を求めた場合には、ほとんどの購入者が破産してしまいます。破産されると物件売却で足りないお金は回収することができなくなってしまいます。
一方で、見て見ぬふりをして、そのまま賃貸を続けさせた場合には、物件の入居者が家賃を払っていますので、それでローンが回収されていきます。
このように貸してる側としては、正直に発表して破産者続出するよりも、黙っておいてローンを回収する方が得というわけです。
では発覚した162件は何なのかというと、単純に売却額と手持ち資金の合計が残債額を超える人たち、つまり一括返済させても破産しないと判断された人たちだと推測されます。

ちなみにどこの不動産業者がバレたのかは報道に出てなくてわからなかったよ。