元ライブドア代表取締役社長の堀江貴文氏の著書「多動力」の要約です。
本書は堀江氏が堀江氏たるゆえん、その行動原理について多くの具体例を交えながら語られています。
このページでは各章の要点だけ挙げていくため、もっと詳しく知りたいと思われた方は文庫本をお求めになられることを推奨いたします。
概要
多動力とは、多くの仕事をこなすための技術ではなく、今を楽しく生きるための生き方そのもののことです。
つまり楽しいこと以外、自分にしかできないこと以外はやらないと決める力のことでもあるので、その本質は不動力とも言えるわけです。
他の人でもできることやワクワクしないことはやらない、好きなことだけでスケジュールを埋めていくという決意が行動に変わるとき、多動力が身に着いたといえます。
では多動力を身に着けるためにはどうすれば良いのでしょうか?
まずは現代にそぐわない間違った考え、価値観、慣習から脱却する必要があります。それを第一章から第三章で解説しています。
そして第四章から第六章は、筆者の堀江氏がいかにして多動力を身に着けるかという具体的な仕事論を展開しています。
第七章と第八章は、多動力を身に着けるために最も重要な「学んだことを行動に移すこと」を邪魔するメンタル面の障壁をいかに崩すかについての解説となっています。
各章についてそれぞれ解説していますが、時間のない方はそれぞれの章の一番下の青枠で囲まれた各章のまとめだけ見てみてください。
第一章 一つの仕事をコツコツとやる時代は終わった
修行は無意味
例として10年は下積みが必要と言われていた寿司屋の修行ですが、専門学校で3か月寿司の勉強をしただけの人が開いた寿司屋がミシュランでピブグルマンを取った(=一流店と認められた)話を出しています。
昔はその道の一流しか知らなかったことでさえ、今ではネットで調べればすぐに知ることができるので、目で盗みながら調理法などの情報を集める長期間の修行はもはや必要ないということです。
3つの肩書で100万分の1の人材
一般の仕事でも同じことで、1つの仕事だけ定年までやり続けるのではなく、3つの肩書きを持つことで、自身の価値を1万倍にできると元リクルートの藤原氏の話を引用して解説しています。
1つのことに1万時間を使うことで、100人に1人の人材になることができます。ここまでが1つのことだけやっている人です。
そこにさらに2つ目のことに1万時間使うことで100×100で1万人に1人の人材になることができ、3つ目ともなると100万人に1人の人材となり、元の価値の1万倍になるというわけです。
インターネットによって業界のタテの壁がなくなり、業界をまたがるような水平分業型の世界になっています。
そんな世界では100人に1人の価値ではいくらでも代わりが効くため給料も上がりませんが、100万人に1人の価値であればその人にしかできない仕事で大きく稼ぐこともできます。
この話について詳しくは藤原和博氏が著書「必ず食える1%の人になる方法」「10年後、君に仕事はあるのか」などで記しています。
第二章 バカ真面目の洗脳を解け
「全て自分でやらなければならない」は妄想
自分の貴重な時間は、自分の強みを発揮できることに集中させるべきであり、他人でもできることはアウトソーシングする、そうすることで圧倒的に多くの仕事をできるようになります。
これについては堀江氏自身の著作活動を例に挙げて解説しています。
堀江氏は年に100冊近い著書を出版していますが、そのほとんどは過去の著書、ツイッターの発言などと1時間程度のインタビューを元に、編集者などが本としてまとめたものです。
全て自分でこなす場合には100冊も出版することは不可能です。
つまり何百もの仕事をするには、何をやるかよりも何を自分でやらないか、人に任せるかを決めることが大切なのです。
完璧ではなく完了が重要
完璧を追い求める人は、一つの仕事に蟻地獄のようにハマってしまい忙殺されてしまうことになります。
しかしクライアントにとっては完璧なことよりも時間通りに完了してあることが重要で、完璧なのは自己満足に過ぎないのです。
なのでサクサク目の前の仕事を片づける「完了主義者」になることで、多くのプロジェクトを進めることができるようになるのです。
準備に関しても完璧にするのではなく、見切り発車してやりながら修正していくのが一番だと言います。
5年かけて準備をした1回目のフェスよりも、見切り発車で5年間トライ&エラーしながら育てたフェスの方が完成度は高くなる、そういうものです。
準備が足りない、とずっとスタートしなければ、いつまで経っても満足するものは出来上がらないのです。
第三章 サルのようにハマり、鳩のように飽きよ
サルのようにハマる
多動力が多動力と言われる所以、興味と集中について解説しています。
ハマっては飽きる、この繰り返しが第一章で語られた業界の越境者、何百万分の1の価値の人間を作る多動力の源泉になります。
多動力は、同時にいくつものものに手を出すのではなく、一つのものにハマって飽きたら次のものにハマる、というように一つ一つにハマっていくことが大事なのです。
この点に関して、日本の「バランス教育」では、何かにどっぷりハマることを良しとせず、全てのことで平均点を取れるような教育であるため、興味と集中を阻害しているように感じられます。
頭一つ抜きんでる為にはバランスは必要ありません、ハマるときはサルのようにハマりましょう。
鳩のように飽きる
飽きるときにはさっさと捨てて次に移ることが大切です。
そもそも飽きることはネガティブにとらえられることが多いですが、飽きるということは慣れて余裕ができてしまうということなので良いことなのです。
どんな分野でも80点までは簡単にたどり着けても、それを100点にするのは膨大な時間がかかるものです。例えばゴルフではスコア80まではいけても、そこから72になるまでは非常に難しいです。
スティーブジョブズも「点と点がいつの間にかつながって線になっていた」と言っていました。
80点取れるものがその「点」ならば、これからの時代は何かにハマって80点取れるようになったら飽きるを繰り返し、いくつもの80点を取れる「点」で網目のように「線」を作れる人間が強い時代になるのです。
80点取れるものをいくつも持ちましょう。
第四章 自分の時間を取り戻そう
堀江氏が多動力を身に着ける上でまず大切と言っているのが「自分の時間」を生きているかどうかです。
ここでの「自分の時間」というのは、ワクワクすることに使っている時間のことを指します。
堀江氏の具体例では、通勤・通学、経費整理、掃除、洗濯、服を選ぶこと、などは彼にとって嫌な時間なのでアウトソーシングして、それで空いた時間にワクワクすることを詰め込んでいるのです。
また自分の時間を奪う「他人からの電話」「意味のない会議」「おかしなやつ」「嫌な仕事」を排除するべきとも言っています。
意志の伝達方法はこちらの時間を強制的に奪う電話ではなく、メールやラインを使うべきです。
意味のない会議で無駄な時間を過ごすならスマホで情報を収集していた方が良いに決まっています。
こちらの時間を消費させに来るようなおかしなやつとは関わらないようにしなければなりません。
自分で仕事を選ぶ勇気を持ち、嫌な仕事をやめる選択をできるようにしましょう。
この章で言っているのは、徹底的に嫌々何かをやる時間を排除し、ワクワクする時間をいかに確保するかということです。
第五章 自分の分身に働かせる裏技
原液を作る
世の中には2種類の人間しかいない、それは「原液を作る者」と「原液を薄める者」。
1日は24時間しかないので、それを増やすことはできません。しかし自分は原液を作り、他者にそれを薄めさせることで、24時間でできる仕事以上のことができるようになります。
堀江氏が発した言葉を、マスメディアが分かりやすく噛み砕いて一般層に流し、さらに優しく解説したものをネットニュースなどが取り上げます。
これは堀江氏が原液を作り、マスメディアやネットニュースがその原液を薄めているという構造です。
あなたのした発言やアイディアが独り歩きして多くの人を動かしているかどうか、それがあなたが原液を作り出せているかどうかの指標となります。
ではどうやってその原液を作り出せばいいのか?やみくもに何かをしても原液を作り出すことは難しいです。
教養
原液を作るための大本となるのは、教養です。
教養とは表面的な情報やノウハウなどではなく、時代が変わっても変わらない本質のようなものです。
何か疑問があれば徹底的に調べる、その歴史や海外事例、研究結果など。そしてその根幹まで知り尽くせれば、その枝葉のことまでも理解できます。
これが教養です。気になったことはその本質まで理解することが大事なのです。
質問する力
質問することを恥ずかしいことと思っている人がいますが、教養を深めるためには人に分からないことを質問するのは大事なことです。
その質問の際に、「何を聞きたいのか」を自身の中で明確にし、端的に相手に聞くことで必要な情報を得ることができます。この能力を「質問力」といいます。
何を聞きたいのかが分からないのであれば、それは基礎教養が足りていない証拠です。
基礎教養を身に着けたうえで、人に質問する「質問力」、ネットで検索する「検索力」を鍛えれば必要な情報は自ずと手に入れることができます。
ちなみに質問力は、聞きたいことを端的に表すことができる能力なので、逆に質問力がない人の特徴としてメールやラインが長いことが挙げられます。
質問力の向上を図るためにメールなどでは意図的に短い文章で意図を伝える練習をしてみましょう。
第六章 世界最速仕事術
効率:仕事が早い人と遅い人の違い1
例えばあなたの仕事がパソコンでのデスクワークであるとします。その仕事は本当に会社に出勤なければならないのでしょうか?朝から夕方の決められた時間で働かなければなりませんか?
出勤がなければ往復の時間がまるまる削減できますし、時間も自由であれば細切れ時間などを利用して仕事をすることができます。
つまり慣習や一般常識といった古い考えにとらわれていて、時代に沿った変革ができていないせいで効率が悪くなっているのです。
本当に相手に会わなければなりませんか?紙の資料が必要ですか?ファックスじゃなくてメールじゃだめですか?
効率化できる箇所を探してみましょう。
リズム:仕事が早い人と遅い人の違い2
仕事の速さで最も重要なのはリズムです。速度ではありません。
電話やラインが入ったり、声をかけられるとリズムが止まります。これは著者の堀江氏が最も嫌うことの一つです。
リズムを止められないように、リズムを狂わす元となるものや人を極力排除する、これが仕事の速さを上げるためにきわめて重要なのです。
意識:仕事が早い人と遅い人の違い3
仕事が溜まる人というのは、仕事量が多いのではなく、仕事に対する考え方、意識が違う場合が多いということです。
例ではラインの返信速度について挙げられています。
忙しい人ほどラインの返信が早く、暇な人ほどラインの返信が遅い。普通は逆な気がしますが、実際そうなっているものなのです。
つまり忙しい人、多量の仕事をこなすことができる人は、すぐにできることをすぐに行い、溜めない癖がついており、逆に暇な人はすぐにできることでも溜める癖がついてしまっているということです。
このような癖に関しても、一つ一つの仕事量・仕事時間を減らすのではなく、ストレスなくできるように工夫することが大切なのです。
それが結果的に継続につながり、癖になり、仕事が溜まるボトルネックを作らないようになるわけです。
あと睡眠は大事、徹夜で仕事なんてしても意味ないのできちんと毎日寝ましょう。
第七章 最強メンタルの育て方
ここまでいろいろ見てきましたが、インプットしたことを行動に移さなければ何も身に付きません。
行動に移すときに邪魔をするのが感情です。
多動力はすでにお分かりの通り、古い一般常識からずれていることが多々あります。
これを行動に移すと周りから奇異の目で見られたりしたり、何か失敗してしまいそれを恥ずかしいと思うかもしれません。
でも大丈夫です。周りの人はあなたのことなんか気にしていません。3日もすれば忘れてしまいます。
だから恥をかく勇気、失敗する勇気を持ちさえすればどんどん免疫ができて、行動を妨げることがなくなっていきます。
恥ずかしい格好をして外に出てみましょう、恥ずかしい失敗話をしてみましょう、意外と周りの人があなたに興味がないことが分かるはずです。
第八章 人生に目的なんていらない
人間は3才の頃はみんな多動力を持っています。目に見えるもの全てが新しい刺激で、なんにでも興味を持つことができました。
しかし大人になるにつれて、新しい刺激に触れる機会がどんどんと少なくなり、「やりたいこと」ではなく「やらなければならないこと」に縛られるようになります。
しかし多動力を発揮している人たちは、いい意味でそのストッパーともいえる者が外れています。
例えばTESLA社のイーロンマスクは服を着れないそうです。服を着てる間にやりたいことを思い付いてしまいボタンを止められない、つまりやるべきことはやってないのに、やりたいことばかりやってしまうのです。
だからこそ常識にとらわれず、火星移住計画をぶち上げたり、渋滞がひどいからとロサンゼルスの地下にトンネルを掘ったりと普通の人には考えられないアイディアを次から次に実行に移していけるのです。
人生に目的は必要ありません。歯を食いしばって将来のことを考えるよりも、今、この瞬間を無我夢中で楽しむことに没頭することが大事なのです。
まとめ
堀江氏が利用していると著書内で紹介していた会社
家事代行:comehome
閉業済み。swippという会社が買収、引き継ぎ。1時間2500円で家事代行(交通費込み)
外部リンク:https://swipp.jp/
堀江氏が教養のためにオススメしている本
サピエンス全史
外部リンク:https://www.amazon.co.jp/dp/430922671X/
管理人の感想
堀江氏の本は何冊か読ませていただいていますが、本文中でもある通り、堀江氏の本は過去のインタビューやツイッターなどを編集者がまとめているだけの場合も多く、内容も似たり寄ったりというものもあります。
しかしこの多動力ほど、彼が普段どのようなことを考え、そして行動しているのかというのを理解できる本は少ないのではないでしょうか。
ちなみに堀江氏の本の特徴として、中途半端な表現ではなく両極端な表現が多いため(電話するやつは全部悪人など)、そのままうのみにして全部真似しようとすると非常に難しいです。
なのでとりあえずできることから始めてみる、電話の例でいうと電話をすべてやめるのではなく頑張って半分とか3分の1に減らす、ぐらいから始めてみることをお勧めします。
・効率の悪い古い慣習を捨て、過去の常識にとらわれてはならない
・他人ができることはアウトソーシングしよう
・やるべきことではなくやりたいことをどんどんやろう
・行動に移そう